「国の借金」にまつわる嘘を、資産(B/S)の観点から斬る!

「国の借金」にまつわる嘘を、貸借対照表(B/S)を用いて、簿記の観点から斬る

今回は、「国の借金」にまつわる嘘を、「貸借対照表(B/S)」という簿記の視点からまとめてみた。また、その後の言葉として続く「国家が破たんする」、「後世につけを残す」という二つの嘘についてまとめてみた。簿記になじみのない人も、決して難しい話ではないので、お付き合い願いたい。

1.「国の借金」という言葉の嘘から

まず、前提として「国の借金」という言葉自体が正確ではない。正確には「日本政府の国債残高」である。(関連記事は ➡ 「国の借金」の嘘と実情)。
では、「政府の国債残高」とは何かについては、企業の「借入金」と類似して考えると、近い。ここで間違っても、「家計の借金」と同様に考えてはいけない。家計は基本的には一代で終わるが、国は続くので、国の会計は、企業(会社)の会計と近いと考える方が、実態に近い。

まずは言葉の誤りを訂正した上で、日本の現状で本当に「国家が破たんする」のか、「後世につけを残す」のか、考えてみたい。

2.お金を借りた時の、貸借対照表(B/S)の動き

貸借対照表(B/S)

貸借対照表(B/S)

まず、「貸借対照表」の見方を。これは簿記の結果として出来るものである。「貸借対照表」はその時点での企業の「資産・負債・資本」を表し、企業の財政状態を示すものである。ここでは、「左側が企業の資産、右側が負債・資本を金額で表したもので、左と右の合計は、必ず一致する」という表、と思ってもらえればいい。

貸借対照表は「バランスシート(Balance Sheet)」の日本語訳で、略語として「B/S」と言われる。よく「企業の財政状態」というが、それは、まさに貸借対照表(B/S)そのものを指す。非常に重要な表であるし、実際、実務において企業の評価には必ずこれが用いられる。簿記ではもう一つ重要な「損益計算書(P/L)」があるが、「財政状態」を示すのは貸借対照表である。以下「B/S」と表す。

お金の流れと貸借対照表

お金の流れと貸借対照表

では、企業がお金を借りると、簿記によりB/S上どうなるのか、見てみる。
企業が、銀行からお金を1,000万円借りたとする。添付した図を見てほしい。すると、B/Sにはこのように書かれる。銀行からお金を借りた証拠として、右側の負債に1,000万円が、一方で左側の資産に現金1,000万円が発生する。
では、その企業が1,000万円で土地を買うと、B/S上は、現金がなくなり土地(固定資産)となる。現金も土地も企業にとっては資産なので、同じ資産側のまま、名前だけが変わることとなる。
このように、お金がかかった取引は必ずこのように記録される。その後、それぞれで、取引の都度増えたり減ったりする。簿記の世界では、お金が動いたら絶対に記録しないといけない。絶対に逃げられない。こうすることで、B/Sが出来上がり、企業の財政状況を示すのである。

そして、B/Sを見ればわかるように、「負債」が生まれれば、必ず「資産」が生まれる。絶対に二つ同時に発生する。そしてそれはどこかに絶対に存在する。「現金(あるいは預金)」として発生して、何か資産を買えば、現金ではなくなるが、必ずB/S上に買った資産として記録される。

なお、この貸借対照表(B/S)は、上場企業は公開が義務付けられている。「有価証券報告書」という法律で義務づけられた文書の中で、毎年及び四半期で公開しないといけない書類である。金融庁のEDINETにて、すぐに調べられるものである。

3.ソフトバンクの例で見て、借入金を考える

ここで、ソフトバンクのB/Sを見てみる。なぜソフトバンクを選んだかと言えば、積極投資のためにたくさん借りて、成長を続けている、という報道が多いため、である。添付の表を見てほしい。

ソフトバンクB/S(2017/3期)

ソフトバンクB/S(2017/3期)

「連結」とあるのは、グループ全部で合算しているためである。また、説明のためだいぶまとめてあるが、EDINETにある実際の決算(2017/3期)の金額である。「ソフトバンクの2017/3期の財政状態」と言ったら、この表のことである。

見るとやはり、巨大グループ企業であると実感する。単位はなかなか見慣れない「10億円」である。ここで、借入金を見ると、なんと「13兆円」もあるので、やはりすごい借入金である。
しかし一方で、資産が24兆円ある。正直、借入比率が高いと思うが、それに融資している銀行等は、財政状態に問題はないと判断した結果、貸し出したのである。さすが、巨大企業グループと言える。
もし問題があるというなら、この資産の24兆円の中身を見ない限り、内容はわからない。

おそらくソフトバンクのB/Sからこの借入金がなくなることはない。一時的な増減はあるだろうが、借換えを続け、5年後には増えているだろう。企業は倒産することを前提にしていない。借入を繰り返しつつ、利息を払いつつその規模を大きくしていくのである。これが企業の成長であり、経済成長なのである。

ではここで、ソフトバンクの借入金だけ見て「破たんする」、と思う人はいるのだろうか?また、有価証券報告書を見ると、2017年3月のソフトバンクグループの従業員数は、68,402人である。となると、借入金は、一人当たり1億8千万円となる。従業員一人当たりでこれだけあるから大変だ、と騒いでいるのだろうか?

更に言えば、ソフトバンクの取締役会や会議で、毎回、「当社グループは借金が多いのでいずれ破たんします。皆で何とかしないと大変になります。」と言っていたら、ソフトバンクが成長するのだろうか?従業員がやる気になるのだろうか?

4.国債残高を政府と日銀のB/Sで見る

では、日本国債を巡って、日本という単位で財政状態(B/S)を見てみる。
「日本国債の発行」とは、政府が政府の保証で借金をすることである。国債の発行により、政府にとっては「国債」という借金(負債)が生まれ、それを買った銀行等にとっては「債権」という資産が生まれる。では、その資産はいったいどこへ行っているのか。日本は、すべて国債を「円」で発行し、国内保有は90%を超えているので、B/Sさえあれば見つけるのは難しくない。

国債残高と日本の財政状態

国債残高と日本の財政状態

図を見てほしい。「国の借金」と言われる政府の国債残高は、1,000兆円である。日本政府のB/S上に、政府の負債として計上される。これが負債側である。
では、資産となった国債は、現在、誰がどこに持っているのか。それが、日銀のB/Sを見ればすぐにわかる。さっきネットで見た2017/3月期のものであるから間違いない。少なくとも、417兆円は日銀が資産として持っているのである。このように、B/Sで判断するのが「財政状態」である。そして、民間銀行もたっぷり持っている。また、あえて言えば、政府はその他の資産がある。

ここで、いろいろ論はあるが、その国の財政状態は、政府と中央銀行は一体として見る(統合政府)。つまり合わせて言えば、日本は政府の借入はたくさんあるが、一方で日銀がその半分を持ち、その他資産も加えれば「資産大国」でもある、ということである。国内全体で、負債も大きいが、それに見合う資産もあるという経済規模というだけである。

国債の流れ(海外のケース)

国債の流れ(海外のケース)

これが、海外に流れていると話はだいぶ違ってくる。国債残高のGDPとの対比で、日本とギリシャが同等の借金大国、という論があったが、状況がまったく違う。ギリシャにはB/Sの国内資産が少なかった。海外に逃げた状態だったために、財政破綻というところまで行ったのである。

つまり、日本の財政状態は、確かに政府の負債側のみを見れば、日本政府の国債残高は大きいが、一方で、日銀を含めて資産側を見れば、国内にそれを保有し、かつ多額の資産をもつ資産大国なのである。B/Sがはっきりそれを示していて、財政状態に問題はまったくない、といえる。国際金融市場では当たり前の話である。だから日本国債の価格が安定しているのである。しかも、中央銀行(日銀)が政府借入の半分も保有しており、あえて乱暴に言えば、日本全体の実質的な国債残高は半分と言える。

こうした真実は、なぜか世にはでてこない。消費税増税が至上命題の財務省・なぜか日本が強くなる方向の議論を隠すか否定するメディアが必死に世論操作している。これが、与党・野党を含む政治家、マスメディア、学者、ワイドショーがこぞってやっているのが現実である。そして日本全体も、その議論で染まっている傾向にある。
しかし、その真実はようやく出るようになってきた。実態は海外からも言われている。ノーベル経済学者のスティグリッツ氏、クルーグマン氏、あるいはウォールストリートジャーナルにその記述があったこともあるという。国債の真実(高橋洋一)「なぜ日本だけがこの理不尽な世界で勝者になれるのか」(高橋洋一)枚挙にいとまはない。そのあたりは、上念司氏、高橋洋一氏、三橋貴明氏、宮﨑哲也氏、田中秀臣氏などの論を是非見てほしい。
財務省オオカミ少年論(田村秀男)本当は世界一の日本経済

5.資産大国の日本で、どうやって「国家が破たんする」のか?「後世につけを残す」のか?

日本はこの20年GDPの伸びが全くなく、確かに「低成長」の状態である。しかし、この財政状態(B/S)の企業をコンサル会社が見れば、まず言うことは、「資産の有効活用をしましょう」ということと「成長戦略が大切です」であろう。断言してもいいが、「借入金を返さないと破たんします」、とか、「借入金が従業員一人当たりでいくらなのでこのままでは潰れます」、というコンサル会社はないだろう。

このようにB/Sを普通にみれば、「日本が破たんする」ことはありえないし「破たん」のしようがない。そう言う人には、逆に、何を根拠にどうやったら破たんするのか、そのメカニズムを説明してほしい。資産の中身を全部知っているとでもいうのだろうか。そもそも、「日本政府の破たん」とは、どいう状態をいうのか。戦争で取られる意外の「破たん」というのを、説明してほしい。

「後世につけを残す」というのも、全くの嘘である。万一、日本政府が倒れれば国債を直接持っている人は困るだろうが、圧倒的に日銀と銀行が持っている。ソフトバンクの例で言えば、ソフトバンクが倒産したら、従業員がその借金を肩代わりする、と言っているのと同等レベルである。法的にあり得ない。また、B/Sで見た通り、引き継がれるのは「負債」である国債残高だけではなく、「資産」もである。後世には、資産も引き継がれる(ただ「国債」という資産はほぼ現金なので、それをうまく使わない限り、現金を渡しているだけになってしまうが・・・)。
また、そもそも、「日本政府が倒れる」とは、どういう状態のことを指しているのか?

6.もう一度日本のB/Sを、資産・負債から見る

日本の財政状態(B/S)

日本の財政状態(B/S)

もう一度、日本全体でB/Sを見てみる。特に資産に着目したい。
添付の図をみてほしい。負債側、特に政府の負債の、「国債残高」については、言葉を勝手に変えられた上で、散々言われる。

では、資産を持っているのはどこか。日本政府と日銀である。政府の資産はいろいろあるが、ここで乱暴にあえて特定すると、日本政府でお金を握る最強の省庁は「財務省」である。
そして、財務省はご存知の通り、増税一辺倒・緊縮財政一辺倒である。散々、日本危機論をあおり続けている。
また、日銀総裁は財務省の大切な天下り先である。なお、現在の黒田総裁は、消費税増税派である。

本来重要なのは、この「資産」の議論である。日本の資産の内容はいいのか、よりよくするためにどうすればいいのか、といった議論がないと、成長も当然ない。
推測で言いたくはないが、B/S上でその資産を持っている財務省・日銀が結託して、その存在を隠して危機感をあおっている、という構図にも見える。

7.考えるべきは「負債」の大きさではなく、「資産」の内容といかに成長するか

以上、日本の財政状態(B/S)を見てみた。この話は、本当に単純な話である。財務省・日銀・メディアはすべて違う手法で否定するが、全く単純に見て正しい見方なのである。

今の日本の財政状態をみれば、本当に重要な議論は何かといえば、「どうやって成長していくか」あるいは、「どのように資産を作っていくか」だと思う。借入金の残高だけ見て大騒ぎしかできない企業(国)が、どうやって成長できるのだろうか?いい成長をすること、いい資産を残すことが、後世のためになる。
また、借入金の議論より、よっぽど「どうやったら成長するか」、「国としてどういう資産があるべきか」の議論の方が難しい。前者だけなら、縮小の道しかないからである。そして、そうした建設的な議論そのものが、成長を促すと思う。
あえてもう一度、まとめておく。

「国の借金」は嘘。実際は「政府の国債残高」。
「国の借金により、後世につけをのこす」は嘘。資産も同様に引き継いでいるため、「つけ」ではない。
「国の借金により、日本が破たんする」は嘘。日本の財政状態で、経済破綻のしようがない。また、「日本が破たん」する意味が全然分からないし、そんな国はこの世に一つもない。

「国の借金」の議論は、このように説明できる。今の日本に必要な議論は、「国の借金」という嘘に悩むことではなく、「どうやったら成長するのか」、「国としてどういう資産があるべきか」の、国の成長戦略である!

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コメント

    • ゆうじ
    • 2017年 11月 30日

    相変わらず分かり易い説明ですね。感服です。
    この間、子供に説明を出来なかったので再チャレンジしてみます。
    「パール判事日本無罪論」に続いて、「経済で読み解く明治維新」をNT7で発注しました。
    最近、上念さんにハマりつつあります。ノリがどんどんエスカレートしているようにも感じますが…(笑

      • てつ
      • 2017年 12月 01日

      是非、お子さんに見せてやってください。必要なら説明にい来ますよぅ(笑).

      上念さんは、口ではいろいろいいますが、非常にしっかりした歴史観を持っていると感じます。
      その上での経済学なので、最も信頼している人の一人です。
      私も脱線はちょっととついていけてないですが、言っている内容と変えていこうとする情熱は共鳴しますね。

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