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歌われない「蛍の光」の全4番の歌詞

蛍の光

歌われない「蛍の光」の全4番まである歌詞を、歌の生まれた明治初期という時代と共に見る

本来「歴史」のカテゴリとして記述したいものではないが、「蛍の光」の歌詞について記述したい。
他国の国歌など、文章はかなり強烈でも愛されるのは、その時の国の状況と思いも含まれているからだと思う。ここでは国歌ではないが「蛍の光」について、記述したい。

1.「蛍の光」の生まれた頃の明治日本

「蛍の光」は卒業式で歌われ、この歌に思い出を持たない人は、いないだろう。歌のメロディはスコットランドの民謡だが、ヨーロッパでも広まりアメリカ大陸でも普及しているようである。日本では、明治10年代に「小学唱歌集」に編集されたときに、稲垣千頴(いながき ちかい)が作詞し「蛍の光」と命名された。明治14年(1881年)に正式に「小学唱歌集」として編纂されている。
それから日本では今も広く愛されて歌われている。

「蛍の光」が日本で生まれた頃といえば、まさに明治の近代化の真っ最中である。明治維新の後期、と言ってもいいと思う。明治10年が西南戦争であり、明治という時代にこそなっているが、まだ「大日本帝国憲法」もできていない。日清戦争・日露戦争はもちろんまだ起こっておらず、まさに、徳川体制からの転換を大急ぎで進めている真っ最中である。西郷隆盛・木戸孝允・大久保利通の維新の功労たちが亡くなり、次の代の、伊藤博文などが必死で近代化を図っていた時代である。

2.「蛍の光」の4番までの完全な歌詞

一般的にその歌詞は2番までは頭に浮かぶと思う。しかし、本来は4番まである歌である。まずは、その歌詞を見てほしい。

蛍の光の4番までの歌詞
蛍の光の4番までの歌詞

意味はいろいろ解釈があるので、あくまで一つの例として見てほしい。
1番、2番は語りつくされているので、ここでは、3番、4番に触れたい。「日本」を意識した歌詞といえる。

【3番の歌詞について】
3番の『筑紫のきわみ』『陸奥の奥』は九州・東北をさす。具体的な地名というより、そういった地方も含めとおくにあっても、という表現であろう。『海山とおく、へだつとも』という表現は、陸地だけでなく海や山で隔たれた諸島である。『その真心はへだてなく』とは、まさに、皆で一緒に、という表現であろう。真心ということばも、へだてなくという言葉も、「日本全体で」という、作詞者の気持ちを表している気がする。

【4番の歌詞について】
4番は北海道、沖縄に触れる。ここで私の好きな表現は『八洲(やしま)のうちの、守りなり』である。日本と直接表現せず、古い言葉を用いている。
八洲(やしま)とは、日本の別表現である。本来は「多くの島からなる国」という意味らしいが、古事記では「本州・九州・四国・淡路・壱岐・対馬・隠岐・佐渡などの「八つの島」の総称と言われ、古くから日本をさす表現の一つとして用いられている。「日本」と直接表現しないところに、日本らしさを感じる。(※ 「古事記」の考え方は非常に広いのでここでは一般的な見解で記述)
『つとめよわがせ、つつがなく』という、最後の句が、現在では物議を出すのであろうか。「つとめよ」は、努力せよ、である。「わがせ(我が背)」とは、女性が男性の背中に対し、「我が友よ、我が夫よ、我が兄弟よ」と励ます際に使っていた表現だそうである。女性たちが、男性たちを叱咤し、協力するような意味といえる。

3.3番・4番の歌詞の表現を見て

さて、こうして3番・4番の歌詞をみてどう思うだろうか。その後この歌詞が使われなくなった歴史も含めて考えると、人によっては「祖国防衛を強要する軍国色が強い」と思うのだろう。今見ても、そう感じる人もいると思う。実際、領土の意識のための歌詞の変更が数回されている。
しかしそう思う人も、感情は抜いて歌詞そのものをもう一度見てほしい。そこには、当時の日本語の表現を巧みに使い、古事記までも使って、豊かに表現されている。また、いかにも日本的と言えるが、表現はすべて、日本と日本人の団結を願う内向きである。「敵」や「侵略者」という表現はまったくない

「日本」を柔らかく表現しつつ「日本人」として、真心をもってへだてなく、男女一致して団結しよう、という、つつましくも自覚を促す、表現の歌と思う

4.「蛍の光」作詞時の時代背景と、それを見て

また、この歌が作られた時期を考えたい。明治10年代というと、まだ、西南戦争が終わったばかりである。明治維新の後期ではあるが、つい最近まで徳川幕府があり、明治維新の真っただ中にあった。暗殺も横行し、国がどうなるか全く不透明である。ヨーロッパ列強のアジア植民地化はどんどん進んでいる中で、「日本」が国として単独で生きていけるかどうか、全く不透明の大混乱期である。そんなときに、稲垣 千穎(いながき ちかい)が、古事記などの表現も使いつつ日本を広く優しく表現し、「一致団結してがんばろう」と表した唱歌である。それが明治政府に採用され、全国の尋常小学校の唄の一つになった。

その当時の世界情勢・日本の状況も見たうえで、改めて歌いなおすと、きれいに広く日本を表現し、真心と誇りをもって国と仲間を大切にしようという、当たり前であり大切なことを表現した歌と、個人的には思う。4番まで含めて、いつの時代にも通用する、普遍的な名作と思う。

あえて言えば、ここまで見たうえでではあるが、地名や表現だけを変にあげつらって、これを変に「軍国主義」という人の方が、よっぽど人を信用していない好戦的な人だな、と悲しくなる。

稲垣 千穎(いながき ちかい)の人物像を簡単に紹介したい。
稲垣 千穎(いながき ちかい、1845年- 1913年)は、国学者、教育者、歌人、唱歌作詞者、教科書編集者。東京師範学校教諭として和文教育を行い、多数の和文教科書を編纂したほか、音楽取調掛として、『蛍の光』・『蝶々』2番など多数の唱歌を作詞した。経歴と蛍の光の歌詞をみただけの感想だが、この人も幕末を駆け上った情熱の人だったのかな、と想像する。

5.「蛍の光」の歌詞全体と当時の時代を見て、思うこと

「蛍の光」の歌詞をこのように見ると、違って見えてくる。別れの歌、ではなく、実は力強く日本を表現した歌なんだと、今までとは違った親しみを覚える歌と思えた。
先人たちの気持ちと言葉の表現の豊かさには、驚かされるし感動する。素直に読めば、国と平和を愛する歌以外の何物でもない。そんな先人たちの思いと表現の詰まった「蛍の光」は、現代にも、そしてこれからも、その誕生の時の先人の思いも含めて、4番まで継がれていって欲しいと願う

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コメント

    • ヒロ
    • 2019年 2月 03日 12:44pm

    最近、蛍の光に3,4番があることを知り、このHPに辿り着きました。全然問題ない歌詞と思います。蛍の光は最近の学校で歌われているのでしょうか?日本の将来が心配です。

      • てつ
      • 2019年 2月 04日 11:37am

      ヒロさん

      コメントありがとうございます。励みになります。

      国歌すら歌われない現状ですからね。心配は心配ですが、心ある人で広げていきましょう!

    • S・H
    • 2018年 12月 11日 6:14pm

    今・現在の日本において、これを削除せよとせまる人たちこそ変人である。
    歌詞の内容からすると、沖縄も周辺の島々も含んだ日本の国々を対象とした内容でありますね。
    色々考えさせられる内容で、現在の人間(政治家も含めて)自分さえ良ければと考えているひとが、過半数を占める世の中。
    これでは、万が一の時国が一丸となる事は無いでしょう。どの国も自分の国を守必要が有ります。
    他国に侵略され自治国家を奪われたくは無いですからね。それだけではなく、他国に対する思いやりと協力が、お互いに必要な事です。
    日本だって、自国に不利益なことは、嫌だからそれを避けるために協力してるのに、約束を反故にして尚且つ金を貪ろうとする国も有るんですからね。

      • てつ
      • 2018年 12月 12日 7:08am

      S.H。さん。コメントありがとうございます。記事を書く励みになります。

      本当に反日的勢力にはあきれます。とはいえ、そうでない人々もたくさんいるので、先人に習いながら前を向いて進んでいきたいですね。

    • 岩内
    • 2017年 10月 29日 10:13am

    蛍の光の3・4番、知らなかったです。平和を願う時代、平和と言われる現在。それぞれの時代での人の心の豊かさ。そもそも「豊か」とは?それは誰にとって?誰のため? 色々と考えさせらますね。いつも素晴らしい情報ありがとうございます。
    「パール判事の日本無罪論」注文しましたよー。もちろん、NT7で(笑

      • てつ
      • 2017年 10月 30日 6:56am

      3番、4番もきれいですよね。子供にも教えてやりたいいい歌だと思います。批判する連中は、よっぽどあおって戦争したがっているとしか思いないですねぇ。

      こちらこそ、いつも読んでもらっていて、嬉しいです!

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