- 2018-7-14
- 金言・格言
- 4 comments
橋本左内が残した、「啓発録」の「5訓」を見て思うこと
幕末にわずか27歳で切腹を命じられて死んだ、橋本左内。医師であり、また、優れた思想家であった左内は若い頃からその力は抜きん出ていた。そんな橋本左内が15歳の時に自分に宛てて残した「啓発録」について、記述したい。
1.啓発録とは
啓発録とは、幕末の志士である橋本左内が自分への「啓発」のために15歳の時に残したものである。大きく5つの項目から成る。それを「啓発録の5訓」という。いろいろな読み方があるが、あえてここではwikipediaにあった記述を引用する。
1.去稚心(稚心を去る)
目先の遊びなどの楽しいことや怠惰な心や親への甘えは、学問の上達を妨げ、武士としての気概をもてないので、捨て去るべき。
2.振気(気を振う)
人に負けまいと思う心、恥を知り悔しいと思う心を常に持ち、たえず緊張を緩めることなく努力する。
3.立志(志を立てる)
自分の心の赴くところを定め、一度こうと決めたらその決心を失わないように努力する。
4.勉学(学に勉む)
すぐれた人物の素行を見倣い、自らも実行する。また、学問では何事も強い意志を保ち努力を続けることが必要だが、自らの才能を鼻にかけたり、富や権力に心を奪われることのないよう、自らも用心し慎むとともに、それを指摘してくれる良い友人を選ぶよう心掛ける。
5.択交友(交友を択ぶ)
同郷、学友、同年代の友人は大切にしなければいけないが、友人には「損友」と「益友」があるので、その見極めが大切で、もし益友といえる人がいたら、自分の方から交際を求めて兄弟のように付き合うのがよい。
上記が、「啓発録」の「5訓」である。
2.橋本左内という人物
橋本左内は越前藩(今の福井県)の人で、医者であり教育者であり、また幕末の志士でもあった。生まれたのは天保5年(1834年)で、アヘン戦争が終わった頃であり、日本は江戸幕府の限界が露呈し始めたころであった。詳細は過去記事に譲るが、安政の大獄によりわずか27歳で亡くなる。(➡維新回天 全体編【6】維新の原動力となった思想家たち、維新回天 全体編【2】明治維新の流れを追う①「決起期」)
しかしわずか27歳で亡くなっているにも関わらず、幕末の頃にあってもその存在感は大きかった。西郷隆盛をして尊敬する人として橋本左内が挙げられている。また、その思想・情熱は脈々と受けつがれ、現在の福井県の教育では「私の啓発録」として自己の啓発を行っているという。
啓発録は、橋本左内が15歳の時に自分に宛てて書いたとされる。また、橋本左内はその10年後に自分の「啓発録」を見たとき、非常に若くて稚拙な自分の「啓発」に恥じる一方で、その時の自分の情熱を忘れないためにも、それを利用して教育などを行ったという。
3.啓発録「5訓」と橋本左内を見て思うこと
啓発録の5訓の内容については読んで字のごとくであり、今にも十分通じる考えであると思う。実際の原文はそれぞれについて細かい記述があり、「5訓」についてより深く解説している。是非、興味のある方は本などを手にしてほしい。
「啓発録の5訓」の文も大変勉強になる名文と思うが、更に言えば、わずか15歳で自己を「啓発」することを実践している橋本左内という人物そのものに対する魅力も感じずにはいられない。そして、その10年後に自分の文に接した橋本左内が更に自分を「啓発」している姿も、後世に生きる者として、学び取りたいと思う。
いわゆる「自己啓発」などという安易な言葉としてではなく、「啓発録の5訓」のごとく高い志を持って自己にも厳しく、そして橋本左内という偉大な先人から学びながら、自分を見つめて常に自己を「啓発」し続けていきたいと思う。
コメント
この記事へのトラックバックはありません。
橋本左内がもし60歳くらいまで生きたとして、15歳の頃の5訓を見て何と思うのだろうか。
私は昔から事あるごとに日記を書いてるけど、あんまり変わってなくて、むしろ退化してるんじゃないかと思う時があるんだけど。
情熱をずっと同じベクトルで持ち続けれるなんて尊敬します。そんな偉人達だからこそ歴史に名を刻むのかな。
橋本左内が長生きしていたら、もっともっと影響を受けた志士たちが出ただろうね。
明治維新そのものが、引いては世界大戦に入るまでの日本が、また違った形になっていたのでは、と思うわ。
吉田松陰もだけど、本当に惜しい人が早世してしまったとつくづく思います。
身の引き締まる言葉ばかりですね。
特に4月から職場・仕事が変わった私にはピッタリ当てはまります。
改めて、てつさんとの「引き続きの択交友」をよろしくお願いします。
こちらこそよろしくお願いしますね。
いい言葉ばかりですよね。どれも好きですが、個人的には「振気(しんき)」という言い方は、非常に心に響きます。
「気を振るえ」といって自分を鼓舞する気持ちは、何歳になっても持ち続けていたいものです。