鎌倉仏教の禅の世界とApple創業者のスティーブ・ジョブズ氏(故)との関係
故人となってしまったが、iPhoneを作ったAppleのカリスマ経営者のスティーブ・ジョブズ氏は、日本をこよなく愛したという。特に「禅」に対する思い入れは強かった。特にジョブズ氏の愛した「禅」を中心に記述したい。
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1.鎌倉仏教と「禅宗」
「禅宗」というと、それ独自で一つの宗教と思う人が多いと思うが、「禅宗」は仏教の一つの派閥である。
仏教というと私も得意な分野ではない。どうしても鳥居があり神社に祀られる神様を拝む「神道」の方が知識が先行するし、生活にも馴染む。もっとも、私の理解では「神道」は宗教ではなく、あくまで日本人としての「道」であり「生活の一部」と思っているが。
とにかく、仏教は、あまりに宗派が多いこと、違いが分からないこと、言っていることが今ひとつ飲み込めないこと、の三拍子で、勉強するに当たっては、どうも苦手分野となってしまう。
しかし、日本の歴史を見ると仏教の各宗派と政治・経済の歴史は切っても切れない関係にある。仏教の流れを知らないと、歴史を正確に見ることが出来ないと言っていい。特に聖徳太子の頃から、平安・室町、そして織田信長・豊臣秀吉・徳川家康の時代に至るまでの「寺社勢力」というものを見ていくと、当時の権力者や政治の世界及び経済を理解する上で、不可欠なものといえる。
非常に単純化してまとめると、仏教の系譜としては大きく二つある。飛鳥(白鳳)・奈良時代のものと、鎌倉時代のものである。ここで取り上げる「禅宗」は後者の鎌倉時代のもの、にあたる。
時代の流れで言えば、聖徳太子の頃の時代の頃に一気に普及し平安時代に発展したた仏教から派生して、後の鎌倉時代に「鎌倉仏教」と言われる分類が出来た。現在の日本においても「仏教」と言われるものは、ほとんどが鎌倉仏教の流れをくむ。
鎌倉仏教は大きく分類すると6つある。上記の表の通りである。
法然の「浄土宗」(じょうどしゅう)
親鸞の「浄土真宗」(じょうどしんしゅう)
日蓮の「日蓮宗(法華経)」(にちれんしゅう)
一遍の「時宗」(じしゅう)
栄西の「臨済宗」(りんざいしゅう)
道元の「曹洞宗」(そうとうしゅう)
教科書等で覚えている人もいると思う。ここではあくまでその6つの分類を述べるにとどめるが、その教えは今の日本人にも大きく影響を与えている。宗教色が薄れた現在でも「信じるのは仏教」と言われる人は、ほとんどがこの鎌倉仏教のどれかに入る。特に「浄土真宗」は葬式の時に強く意識する宗派と思う。
上記の通り、鎌倉仏教というと大きく6つに分類でき、更にそれは3つの「種類」に分類できる。「浄土宗」と「法華経」と「禅」である。
「開祖」の年代を見れば分かるとおり、鎌倉時代(1192~1333年)に集中して起こっている宗派である。そしてそれが現在まで続いている。
2. 道元と曹洞宗
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このブログで取り上げたいのは、Appleの創業者のスティーブ・ジョブズ氏が学んだとされる「禅宗」である。先ほどの分類で「禅宗」とは「鎌倉仏教」の一つである事は、前の段落で示したとおりである。
また「禅宗」の中には、大きく二つの流れがあることも表に示したとおりである。一つは栄西(えいさい)の開いた「臨済宗(りんざいしゅう)」、そしてもう一つが道元(どうげん)の開いた「曹洞宗(そうとうしゅう)」である。ここでは、ジョブズ氏の学んだ「曹洞宗」について記述したい。
曹洞宗は道元によって開かれた。教科書的には「道元」であるが、これほどの人を呼び捨ては心苦しいので「道元禅師(どうげんぜんじ)」と示したい。
道元禅師の「曹洞宗」はとにかく修行が厳しいことで有名である。「修行により悟りが開ける」として、修行を強く重視する。なお、開祖は道元禅師であるが、それを広めたのは「瑩山(けいざん)禅師」と言われる。曹洞宗ではこの両師を指して「両祖(りょうそ)」と呼ぶ。
曹洞宗の道元にも臨済宗の栄西にも、当時の全盛を誇った天台宗の比叡山にて仏教を学んだ。その後China(中国)に渡り「禅」を学んだ。当時のChina(中国)は「宋」の時代で宋に学びに行く事を「入宋(にゅうそう)」と言う。
3.2つの「大本山」~永平寺と總持寺(そうじじ)~
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曹洞宗の「総本山」、若しくは「大本山」は二つあると言われる。一つは福井県の永平寺、もう一つは横浜市にある總持寺(そうじじ)である。
どちらが有名、と言うことはないが、特に有名なのが福井県の「永平寺(えいへいじ)」である。福井市から車で30分くらい離れたところにある永平寺は、かなりの山奥と言っていい。今でこそ道路があって観光地化しているが、昔で考えればかなりの山奥であったことが推測できる。
寺自体は敷地も広く大きい。当時からかなりの勢力を誇った事が想像できる。また、現在においても修行しているお坊さんがたくさんいる。非常に特徴的なお寺なので、機会があれば是非訪れることをお勧めしたい。
4.スティーブ・ジョブズ氏の愛読書「正法眼蔵」(しょうぼうげんぞう)
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iPhoneを世に出して世界を変えた、Appleの創業者のスティーブ・ジョブズ氏は、深く日本を愛していたことで有名である。その自伝の随所に日本、特に「禅」についての記述がある。愛読書に「正法眼蔵(しょうほうげんじょう)」があったとされる。「正法眼蔵(しょうほうげんじょう)」とは、曹洞宗の開祖の道元が書いたとされる「仏教思想書」である。私がジョブズ氏が「禅」を深く愛した、と知ったのは、愛読書が道元のものであったことからである。それを知って初めてジョブズ氏がいかに深く「禅」に傾倒していたかを知った。
なお、ジョブズ氏は本気で「禅」の世界で出家までしようと考えたようである。iPhoneを開発したジョブズ氏いわく「集中力もシンプルさに対する愛も、禅によるものだ」とまで言ったという。iPhoneが生まれた奥底の背景に「禅」の考えがある、と言っていいのではないだろうか。
5.仏教(禅宗)とジョブズ氏とを見て
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「宗教」というと、とかく日本人は敬遠しがちである。
しかし、今あるお寺や歴史を見ると、実は日本人の歴史・生活・考え方に深く根付いているものであることに気づく。戦国時代に織田信長が散々手こずった「一向一揆」は浄土真宗の本願寺派によるものである。
そして、それを愛する人が日本人以外にもたくさんいる。まさかスティーブ・ジョブズ氏が「禅」をそこまで深く愛しているとは知らなかったが・・・。
単に観光で訪れるだけではなく、お寺の由来や宗派も知っておくとより一層楽しく観光が出来ると思う。まずは「鎌倉仏教」を勉強すると日本の歴史を見る上でも大きなきっかけになる。是非、ご参考に!
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