- 2017-9-6
- 経済
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失業率とインフレ率を、マクロ経済学(フィリップス曲線)を通じて考える
最近ネットでのニュースを聞いていた時に出てきた、「フィリップス曲線」について記述したい。私が会計士試験の時に勉強して覚えた内容がニュースに出てきたので、久しぶりに調べてみた。経済学の一部を紹介できればと思う。
1.ニュースと「フィリップス曲線」
ニュースで出てきた文脈は、
→「アベノミクス」により金融緩和された
→デフレから(少し)インフレ基調に移動した
→失業率が下がった
→雇用が増えた
→賃金が上がる
という論調で、これは「フィリップス曲線」で説明される、という話だった。
2.フィリップス曲線とは
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「フィリップス曲線」は、経済学の有名な理論である。ニュージーランド生まれの経済学者、アルバン・W・フィリップスが1958年の論文で発表した理論である。失業率と物価上昇率には相関があり、短期的に、インフレ率が高い状況では失業率が低下し、逆に失業率が高いときはインフレ率が低下することを意味する。
図のように、グラフにすると単純で、インフレ率が高いと失業率は低くなり、インフレ率が低い(あるいはデフレ)と失業率が上がる、というものである。
グラフ自体は単純だが、インフレと失業率に着目して相関関係を理論的に導き出したフィリップスの功績は大きく、その後の経済学者に大きな影響を与えた。一方でフィリップス自身はもともと社会学を学んでいたが、ケインズの経済学に興味を持ち経済学に転向した経緯を持つ。
3.フィリップス曲線を巡る経済学の議論
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フィリップス曲線は、経済学の中でいろいろ修正が加えられていく。「古典派経済学」、「ケインジアン」、「マネタリスト」、「短期フィリップス曲線」、「自然失業率仮説」等々、ここから数々の議論があり結論は一つではないが、「失業率」と「インフレ率(物価)」に因果関係があるというフィリップス曲線の議論は、色あせることなく生き続けている。実際の日本での統計からプロットしていくと、図のようになり、フィリップス曲線に近い形となっている。もちろん、必ずしも一致しないケースもあるが、世界的にも実証されている。
要するに、デフレ及び低い成長(低インフレ)は失業を増やすということである。失業が増えることは、直接自殺であったり教育に影響を与え、歴史的にも社会不安を与えるもっとも大きな要因と言える。
4.「物価の上昇」の真の効果と日本の現状
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物価の上昇というと、モノの値段が上がるといったマイナスイメージにくるが、マクロ的な視点でいうと、物価の上昇は、給料の上昇を生み、経済の成長を意味する。
逆に言えば、物価の下落もしくは低成長は、給料が減るか増えないことを意味する。と見てくると、少なくともデフレや低いインフレの状態、すなわちマイナス成長や低成長は、失業を生み社会にいい影響は与えないと言える。日本で「失われた20年」と言われるが、物価の上昇状況を見てもそれがうかがえる。
経済学の言うことがすべて正しいとは思わないが、図やグラフで見ると、説得力がある。また、こういう研究や見方をする人がいるということを知ることは、勉強として面白い。
5.フィリップス本人像
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それを20世紀半ばから分析したフィリップス曲線の成果は面白い。受験で勉強したことではあったが、実際のデータと見比べてみると面白いし、そういったことを実際のニュースから解説してくれると興味がわく。
なお、フィリップスは自分の理論の計算のために、水力を用いたコンピュータを作った。写真の人物はフィリップス本人である。
経済学はとっつきにくい学問だが、こうした理論を作った人達のエピソードを見ると面白い。
コメント
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正規&非正規雇用の問題があるとしても、デフレ基調の中での低失業率は現政権を大いに評価すべきポイントですね。しかし、ポスト安倍の面々が緊縮財政論者ばかり・・・。
おっしゃるとおりで・・・。
高橋さんを財務相、青山さんを外務相、くらいのことをやってくれるといいんですけどね・・・。