マハティール首相と「日本なかりせば」~マレーシアの政権交代と地政学的影響~

マハティール氏

マハティール首相の人となりを「日本なかりせば」の演説から見ると共に、2018年5月のマレーシアでの政権交代を考える。

この記事を書いている2018年5月に、マレーシアで歴史的な総選挙結果が出た。マハティール氏が再度首相に返り咲いた。年齢は実に92歳。そして、この選挙結果が世界、そして日本に与える影響は大きい。これも、なかなかテレビ・新聞で取り上げられない。日本にとっても非常に重要なので、是非ご覧いただきたい。

1.2018年5月9日の総選挙による歴史的な政権交代

選挙に勝利したマハティール氏

選挙に勝利したマハティール氏

マハティール氏が率いる野党連合は、2018年5月9日の総選挙の結果、下院での過半数を得た。これにより、マハティール氏が首相として返り咲いた。実に92歳で、世界で最高齢の国家元首となる。選挙前は当選は難しいという憶測が多かったが、結果は見事な勝利となり、老兵マハティール氏の底力を見せつけた。

ナジブ前首相

ナジブ前首相

マハティール首相の問題意識は、前政権となった「ナジブ政権」に対し、「ナジブ氏のやりたい放題」と批判を強め、その打倒を図ったものである。
ただし、マハティール氏の前のインタビューによれば、政権を取っても自らがいつまでもやることは無く、現在服役中のアンワル・イブラヒム氏が恩赦された後に政権を引き継ぐとしている。

いずれにせよ、ナジブ政権を倒すべく立ち上がった老兵により、2009年から続いたナジブ政権は終わりを告げた。また、イギリスから独立して以来マレーシアの政権を担ってきた「統一マレー国民組織(UMNO)」は初めて政権から出ることとなり、歴史的な選挙となった。

2.マレーシアの現状及び地政学的位置づけ

マレーシアの位置

マレーシアの位置

マレーシアの位置について、おさらいしておきたい。ニュースを見るときには、必ず地図で位置を把握しておかないと、内容の理解を妨げる。

添付の地図のとおりである。なお後述するが、前首相のナジブ氏はかなりの親中国で、ほとんど中国の言いなりであった。また、東南アジア諸国はすべからく中国の影響を受けており、その経済力によりどんどん影響力が強くなっている。完全に政治勢力も、中国の意向の影響を受ける状況となっている。特に、ラオス・カンボジアは、ほぼ中国の「自治区」に近い。政権と中国の癒着もひどい。なんと、中国の人民元が普通に通用する場所もある。また、ミャンマー・ベトナムも大きく影響を受けている。

このあたりの地方は古くから華僑の影響が強く、中国資本の依存度が高かった上に、この中国の経済発展によりマネーの流入があったことから、中国の間接的支配が進んでいるという状態である。

3.マハティール首相の日本との関わりと「ルック・イースト政策」

マハティール首相は、この選挙に勝つ前から政権を長らく担ったことのある大政治家である。政権は6次まであり、実に22年間もの間、マレーシアを引っ張ってきた。大の親日家で、日本を見習うことでマレーシアは発展するという考えの持ち主である。

マハティール首相の政策で「ルック・イースト政策」と呼ばれるが、「東に見習おう」と直訳できるこの政策は、基本的には日本を指している。日本を見習って経済発展を遂げようと言うことで、日本の協力も含め行われ、マレーシアではおおいに成果が上がった。

立ち上がれ日本人

立ち上がれ日本人

個人的にも親日で日本語は堪能、息子や娘を日本の大学に留学させ、首相退任後は日本のパンをマレーシアで、ということで、日本人との共同経営でベーカリーを開くほどである。ただし、このパン屋は12店舗あったが、2018年4月にすべて閉店となったようである。更に、日本にて書籍も出しており、「立ち上がれ日本人」(新潮新書)など、日本に対する叱咤も含め、日本を深く信頼するからこその書籍が出ている。

一つエピソードを紹介したい。平成6年(1994年)にマレーシアを訪問した当時の村山首相・土井たか子衆議院議長がいつもどおりの日本の謝罪をすると、マハティール首相は、

「日本が五十年前に起きたことを謝り続けるのは理解できない。過去のことは教訓とすべきだが、将来に向かって進むべきだ」
「日本に対して今さら戦後賠償を求めるようなことは、わがマレーシア国民にはさせない」
マハティール首相

マハティール首相

と言ったという。単なる親日家ではなく、歴史に根ざした認識と信念を持って、日本を深く理解する人である。

「ルック・イースト政策」は1981年からの政策である。非常に有名で、日本に見習うべく強く進められた。しかし、日本のバブル崩壊やその後の低成長、そして自虐史観に基づく日本の状況を見て、さすがのマハティール氏も「イーストとは韓国・中国を含む」と軌道修正せざるを得なかった。しかしそれでも政策は進められ、マレーシアは確実な経済発展を遂げている。また、そうした結果もあって、マレーシアは非常に親日な国としても言える。両国の友好・発展のために、マハティール氏が果たした役割は非常に大きい。

4.「日本なかりせば」という演説に見るマハティール首相の認識

そのマハティール首相の日本に対する認識を最も強く表すのが、1992年10月14日の「欧州・東アジア経済フォーラム」で行った演説である。下記はその演説の一部を抜粋したものである。

「日本なかりせば」のマハティール氏の演説

マハティール氏

マハティール氏

東アジア諸国でも立派にやっていけることを証明したのは日本である。そして他の東アジア諸国はあえて挑戦し、自分たちも他の世界各国も驚くような成功を遂げた。東アジア人は、もはや劣等感にさいなまれることはなくなった。いまや日本の、そして自分たちの力を信じているし、実際にそれを証明してみせた。
もし、日本なかりせば、世界はまったく違う様相を呈していたであろう。富める国はますます富み、貧しい南側はますます貧しくなっていたと言っても過言ではない。北側のヨーロッパは、永遠に世界を支配したことだろう。マレーシアのような国は、ゴムを育て、スズを掘り、それを富める工業国の言い値で売り続けていたであろう。

実際の演説はかなり長いものである。決して日本をほめるための演説ではなく、アジアの経済発展について事実に基づいたマハティール首相の認識を述べたものである。今見てもまったく色あせること無く素晴らしい演説であり、非常に勉強になるものである。自虐史観がすりこまれている日本人にとって、中国・韓国以外のアジアの国の認識を聞けると勉強になる。興味ある人は是非見てほしい。

5.ナジブ前政権の政治 ~腐敗と親中~

ナジブ氏と習近平氏

ナジブ氏と習近平氏

ナジブ前政権は、かねてから中国よりとの批判を受けていた。中国との経済協力を結ぶ一方で、南シナ海の人工島に関する領土問題を、中国の言うペースで認めた形となった。これに、当時の野党はこぞって反発している。

また、2015年7月20日にアメリカ司法省が提訴した「ワン・マレーシア・ディベロップメント」の事件は象徴的であった。実に800億円もの不正振り込みがあったとされ、追求されている。

また、夫人のロスマ氏は、散財ぶりがひどく、賄賂疑惑も深まっていて、かなりの贅沢をしていたようである。マレーシアの「イメルダ夫人」とまでいわれるそうである。「イメルダ夫人」は少し古いのでご存じの方がいるかどうかはわからないが・・・。とにかく、黒い疑惑が絶えない。

このような政権が倒れ、老齢のマハティール氏が首相となったのである。

6.東南アジアの情勢とマハティール首相の政策

進む中国の東南アジア進出

進む中国の東南アジア進出

東南アジアは、中国が「植民」に近い形でどんどん進出をしている。華僑のネットワークを使ったり、東南アジア諸国の国内の対立を利用して、結果的に中国化を進めている。いわんや、人工島に基づく領有権について当事者である東南アジアを籠絡することで、東南アジアすなわちマラッカ海峡を含む一帯を自分の意のままにして、本気で覇権国家を目指して進んでいる。マラッカ海峡を握られたら、日本の石油などの生命線が脅かされることとなる。また、国境などというものは、彼らの概念で重要では無い。あるのは、「覇権主義」に基づく進出のみである。

一方で、マレーシアの首相として返り咲いたマハティール氏は、早速動いている。マレーシアとシンガポールを結ぶ高速鉄道計画の工事の見直しを発表。外資による受注に対して警戒した物だが、ほぼイコール中国資本への警戒である。また、ナジブ氏に対しては出国禁止とした。今後の汚職に対する捜査等によるものであるが、賄賂の追及含め徹底的に行うことの姿勢が現れている。

7.日本の取るべき方向性

中国の無茶な膨張を押さえるために動いている日本(安倍政権)とアメリカにとって、非常に大きな力となると思われる。地政学的にも非常に重要な位置にある。カンボジア・ラオスの政権がどうしようも無いくらい中国の言いなりになっている今、マレーシアで、中国への警戒をしっかり持った政治家がトップになったことは非常に喜ばしいことであり、また一方で、日本がリーダーシップを持って中国に対峙していかないといけないだろう。

安倍首相であれば、マハティール首相とうまくいくのは間違いないだろう。そこについての心配は全くしていない。アジアのトップ達、インドのモディ首相フィリピンのドゥテルテ大統領、そして今回のマレーシアのマハティール首相、としっかり連携して中国に対峙できれば、非常に効果的と思う。当然、アメリカのトランプ大統領との緊密な協力が欠かせない。
北朝鮮問題もからみ、中国を取り巻く世界情勢は大きく動いている。安倍首相とトランプ大統領の連携が最も重要で、そこには問題ないと思っているが注視していきたい。

あまりに下らない国会にはうんざりである。安倍首相や政権に全く非の無い、森友・加計・セクハラで騒いでいる野党とマスコミ、そしてそれに乗ずる自民党の親中国の連中は、国会に出てこなくていいので、こうした議論を真剣に進めてほしい。テレビ・新聞の下らない報道も無意味どころか害をなすので、消えてもらいたい。あまりに情報を操作しすぎと思う。

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コメント

    • ゆかり
    • 2018年 5月 22日

    92才!!選んだ国民も立候補したマハティール首相も凄いね。勇気もらえます。その上、日本の事を非常に良く理解してくれていて、この時期とても心強い!
    良いニュースだ◎

      • てつ
      • 2018年 5月 23日

      中国・韓国以外のアジアは、日本に感謝している国が多いんだけどね。
      日本も奮起してほしい!

    • 優子
    • 2018年 5月 27日

    非常に良いニュース。92歳で国を守る意思。反日ばかりが報道されて、親日は報道されない。悲しいね。
    でも、日本人もバカばかりではない。安倍政権が崩れていかないのがその証拠。

      • てつ
      • 2018年 5月 27日

      ほんと、マスコミは見る価値がないねぇ。

      お互い、虎ノ門ニュース見て勉強しましょ。

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