- 2018-4-23
- 政治
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地検特捜部を探求し、その存在について考える
「地検特捜部」というと、大事件を捜査し世の中に大きな波紋を投げてきた。「正義のヒーロー」とまでは言わないが、敢然と悪に対して捜査する、といったイメージがある。
しかし、今、私は大きな疑問を持ってみている。ライブドア事件等からおかしさは思っていたが、最近の「リニア談合」と言われる東京地検特捜部の捜査、森友事件に見る大阪地検特捜部のマスコミに対するリークの動き、から、その存在そのものの疑念はどんどん高まっている。
あまり「地検特捜部」というのは深く考えることはないので、ここで改めてまとめてみた。是非、お付き合い願いたい。
1.地検特捜部とは
「地検特捜部」はよくニュースを賑わす。過去の案件で最も有名なのは、やはり東京地検特捜部の「ロッキード事件」であろう。この記事では、過去の案件は深く触れないが、とにかく、その捜査の対象となり事件となると、世間に大きな影響を与える存在であることは間違いない。
「地検特捜部」とは、法務省の一部局である。いわゆる「検察」という「検察庁」は、裁判所に対応するように、「最高検察庁」・「高等検察庁」・「地方検察庁」・「区検察庁」と4種類ある。
そのうちの「地方検察庁」は50庁あり、その中で、東京・大阪・名古屋の3庁にのみ設置されているのが、「特別捜査部」である。それが「特捜部」である。なお他の地方検察庁には特捜部はないが、それに準ずる部局がある。
特捜部は、強力な捜査権限を有する検察庁の中でも、特定の事件に絞った集中的な操作を行う機関として存在する。その特殊性から「最強の捜査機関」とも言われ、数々の事件を捜査し立件してきた。
2.過去の案件と大阪地検の証拠書き換え事件
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過去の特捜の捜査案件は枚挙にいとまが無い。その主なものをまとめてみた。添付の表を見てほしい。
どれも一冊の本になるほどの事件であり、社会を大きく揺るがした。また、その時に投げかけた波紋により、政治家の進退であったり会社の存亡に直接的な影響を与えてきた。また、そうした事件をきっかけに対応する法律等が作られるなど、日本社会に絶大な影響を与えている。
しかし、一方で特捜そのものの不祥事、その捜査対象・捜査手法に政治的な背景が指摘され、問題となっている。特に大きかったのが、平成22年(2010年)の、厚生労働省の元局長の村木厚子氏に対する告訴における大阪地検特捜部の主任検察官の、証拠書き換え事件である。
大阪地検特捜部 証拠書き換え事件
大阪地検特捜部は、虚偽有印公文書作成・同行使の疑いで逮捕した村木厚子氏を告訴したが一審では無罪判決となった。かなり強引な立件であった中で焦っていたとみられる地検特捜部の前田検事が、特捜部の描いていた事件の構図に沿うよう証拠を書き換えたのである。
この書き換えをスクープしたのは21日の朝日新聞朝刊。そのすぐに、最高検察庁が前田検事を逮捕するという、異例中の異例の事態となり、検察同士での立件となった。結果、村木氏は無罪となり、前田検事は有罪で実刑判決となり当然検察官を辞することとなった。
記憶にはある事件だが、改めて見ると、このときも朝日新聞がスクープしたのか、と感じ入る。この事件は村木氏も無罪を勝ち取り、真実が明らかにされて良かったが、特捜及び検察は人を拘束し犯罪者としてのレッテルを貼る力を持っている。人間一人の人生を、完全に変えてしまうだけの権力を持つ。実際村木氏も、この事件により大きく人生が変わった。ただし、村木氏はその後厚生労働省に復職し、事務次官にまで上り詰めている。苦労があったとは言え、人望も実力もあった官僚だったようである。
ミスがあることはあり得ると思うが、特捜・検察が「嘘」をついてまで人を犯罪者にする、という暴走行為が働くことがあることは、本当に恐ろしい。特捜・検察の仕事はもともと犯罪者ばかりを扱っているから、大変であることは理解できる。しかし、その権力の強大さを考えると、高いモラルと意識でやってもらわないと、恐ろしい存在でしかなくなってしまう。実際、特捜の闇といったことは暴露されている。少し古い本だが紹介しておくので興味のある方はご参考に(➡「特捜崩壊」石塚健司氏著)。ここが不正を働いていては、本当に社会として危険である。
3.「森友学園問題」に関する特捜リークを考える
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2017年・2018年と、「森友学園問題」で大騒ぎである。私は、この問題自体のことより、これを国会で取り上げ、安倍政権を倒す道具としてバカ騒ぎする政治家・マスコミに対して、うんざりしている。それらについては、過去記事にまとめてあるので参照いただきたい(➡「森友」に揺れる第196回国会とその無駄(コスト)を考える)。内容も国政全体で考えればたいした話ではなく、安倍首相おろしの道具と化したこの事件について、あまり興味を持つ気もなかった。
しかし、森友学園問題でも驚いた点が二つある。一つは、まさかあの財務省が文書の書き換えを行っていたこと、もう一つは、その情報を大阪地検の特捜部が朝日新聞にリークしたと言われている点である。
一点目の財務省の件は、ここでは関係ないので割愛する。二点目の大阪地検の特捜部がリークした点について、もしこれが本当ならば大問題である。強力な捜査権限を持つ特捜・検察が、世論操作まで行うとなると、大変なことである。
しかし、これについて、マスコミはほとんど報道していない。民進党の代表代行の江田健司衆議院議員がわざわざ丁寧に、ツイッターで「大阪地検の女性特捜部長のリーク」とまで言っているのにも関わらず、である。大阪地検の女性特捜部長などひとりしかいなく、物議を醸し出している。大阪地検は否定し、江田氏は「推測を語った」とその後釈明しているが、まったくもって疑わしい。実は、当初から検察リークの説は流れていた。元財務官僚の高橋洋一氏が早くから指摘していた。しかし私も、「まさか検察(特捜)が」、と思っていた中で、江田氏のツイッターとその騒動を見るにつれ、相当疑いを持って見ている。
大阪地検特捜部の部長は山本真知子氏で、女性初の特捜部長として、相当な実力を持った人のようである。記事に憶測はあるかも知れないが、ある記事によれば、「森友学園問題」は報道当初から重大な関心を持ち、「やる気まんまん」で捜査を進めていたようである。
違法性があるのなら、捜査自体はやればいいとは思う。国有地の払い下げ問題は「森友学園」のみならず、かなり黒い部分があるのでこの際問題点を出してもいいと思う。しかし、これを安倍政権打倒、という全く関係の無い政治目的に無理矢理利用しようとすることは全くおかしい。ましてや、捜査機関が捜査証拠を一新聞社にリークするなど言語道断であり、それこそ「法治主義」を根幹から揺るがす、とまで言ってもいいのではないか。
この問題は、なぜか全然クローズアップされない。大問題であると思うのだが・・・。しかし、残念ながらマスコミと特捜・検察の関係をよく見てみると、どうも「もちつもたれつ」の関係にあり、リークは古くから少なからず常態化しているようである。本を紹介しておくので、興味のある方は是非((➡「歪んだ正義」宮本雅史氏著)。知れば知るほど落ち込んでしまうが・・・。
4.「リニア談合」事件から思うこと
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「リニア談合」事件は、東京地検の特捜部の案件で、2018年の3月23日に検察が起訴したことにより、捜査は終結し、今後は裁判に移る。内容は、下記の通りである。
このうち、大成建設と鹿島建設は検察に猛反発している。特に大成建設は強く反発し、徹底抗戦の構えである。
裁判もまだだし、2018年4月の今の時点で結論はわからないが、この捜査は当初から疑問を持っていた。「リニア」という新技術に対して、かなり慎重に打ち合わせをすることは当たり前であり、そもそも「談合」と呼ぶことが正しいのか、という疑問を持っている。「談合」とは、公共事業に対するものであり、リニアの発注者はJR東海という民間企業だからである。とはいっても、政府の財政投融資が入るため「準公共事業」とも呼べるそうである。とにかく、この一連の特捜の対応と、マスコミが大喜びでたたいている姿が、異様にしか思えかなった。
ゼネコン関係者は「これが談合といわれるなら、もうリニアには手を出しづらくなる。大成と鹿島が徹底抗戦したくなる気持ちはわかる」と話している。また、リニア工事のように高度な技術を必要とする工事で談合が指摘されることは、まれであるそうである。
更に、今回幹部が逮捕され、その映像が流されたが、大成建設は激怒している。「約3ヶ月にわたり任意で応じているにもかかわらず逮捕され、到底承服いたしかねる」と怒りをあらわにし「公判でも徹底的に戦う」と検察との対決姿勢を鮮明にしている。
また個人的な心情として、「日本の技術の粋を集めて行う大工事であり、日本の国力を高める大きな挑戦」といえるものに、なぜ特捜は水を差すのか、と言いたい。全線のうち86%がトンネルで、南アルプスのトンネルは25kmにも及ぶチャレンジングな大工事である。また、これができれば、東京-名古屋間はわずか40分で結ばれ、日本の物流にまた大きな革命をもたらすと言ってよく、世界をリードすることとなる。
個人的には談合や独禁法の取り締りに疑問を持っているためでもあるが、今回のはひどく見えて仕方が無い。日本の足を引っ張るための捜査となっているとしか思えないし、特捜が意地になっているように見える。
今回の特捜の立件で問題となっている、品川・名古屋の駅の工事は、最大の難関と言われている。既存の駅を生かしながら、かなり深くを掘り下げて工事を進める事となる。よほどの経験と規模を持ったゼネコンでなければ出来ないのは想像できる。また、綿密な打ち合わせなしに受注できるものでもない。
大成建設と鹿島建設には、是非裁判で勝利を勝ち取ってほしいと思う。
実際に、この提訴により、リニアの工事自体は大幅に遅れるとみられている。また、検察と徹底抗戦を見せている大成建設と鹿島建設は、自治体からの指名停止を受けている。厳密な法的問題点は詳しくないが、少なくとも現状の結果を見て、日本のためになっているとは思えない捜査と思ってしまう。
5.地検特捜部の意義を思う
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最近の安倍おろしの一環、とまでは言わないが、特捜の捜査の動きに対して、疑念を抱かずにはいられない。万一、今のマスコミ・野党と連携しているとしたら論外だろう。もともと、ライブドアの時にもかなり無理な捜査であったように見えたが、当時はさほど感じずにいたが、最近のものはどうもおかしいとしか思えない。
もしそれが出来ないのであれば、即刻解散すべき機関と思う。それほど巨大な権力と影響力を持った機関なのだから。
コメント
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リニアという新たな技術の垂涎で日本が改めて世界一のものづくりの国であることを認めるのが許せない色々な何かが裏にありそうですね。
一筋縄ではいかないとは思いますが、日本が一体となって成し遂げたい気持ちがまとまるのを祈ります。
正義を粛々と。それが我が国◎
ほんと、適正な捜査なら文句はないんだけどね。
どうも、裏があるようにしか思えなくて・・・