お寺を楽しむなら仏教を知ろう!『6-2-6』で見る日本の仏教の流れ
観光に行くとよくお寺にも訪れることがある。その建物の古さや日本的なたたずまいを見ると、日本を感じられて本当にすがすがしい。そこで、それに加えて「仏教の流れ」を知ってお寺を見ると、更に親しみや重みを感じる。『6-2-6』をキーワードに分類した。是非、ご覧を!
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1.日本の仏教の流れは『6-2-6』で覚えよう!
観光に行くと「お寺」に行く人も多いと思う。そこで、お寺の「歴史」を知った上で行けると、より観光が楽しめる。
とは言え、仏教は「宗派」が多くその歴史をそれぞれ知ろうと思うと、あまりに複雑で難しい。よほどの専門家でもない限り、私も含めてやる気が起こらない。
ただ、大きな流れだけ押さえられると少し見えてくるし、それだけでも「知った気」になれる。
そこでお勧めが『6-2-6』という覚え方である。それぞれの数字は「宗派の数」を表わす。
① 【6】「奈良仏教」と呼ばれる奈良時代の「南都六宗」
② 【2】その後の京都での「平安仏教(平安二宗)」と呼ばれる、「最澄・空海」の仏教
③ 【6】平安時代後期から起こった「鎌倉仏教」の6つの仏教
それぞれ、その政治の時代の変遷に大きく関与している。①の「奈良仏教」と言われる「南都六宗」の「南都」とは奈良の「平城京」を指す。まさに平城京を中心とした奈良時代に栄えた仏教の宗派である。
奈良時代は、平城京ができた和銅3年(710年)から、京都に「平安京」として遷都した延暦13年(794年)の80年超の時代を指す。平城京が確立したのは、女帝の元明天皇(第43代)の時代であり、日本の第二の建国とも言える天武天皇(第40代)・持統天皇(第41代)から程なくして始まっている。
そして、時代が奈良から京都に移ったのが、「なくよ(794)ウグイス平安京」で覚える「794年」の平安京への遷都である。
第50代の桓武天皇により行われた奈良から京都への遷都(正確にはその間に「長岡京」があるがここでは割愛する)が行われた背景には、「寺社勢力」と言われる仏教勢力の力を落とすことがあったと言われる。それほどに仏教勢力は無視できる存在ではなかった。
その京都の平安時代に力を持ったのは「最澄・空海」が開いた「天台宗・真言宗」の「二宗」である。「平安二宗」とも言われるこの二宗派を「平安仏教」とも呼ぶ。従来の南都六宗を大きく改革したこの2つの宗派が、平安時代の仏教の中心だった。
平安時代は、延暦13年(794年)から文治元年(1185年)の約390年もの長きに渡る。その後半期は武士の台頭が始まり日本は大きく変化をする過程に入ってくる。世が乱れる中で仏教も大きな変化を果たすのが、この平安末期から鎌倉初期の時代である。
この頃に生まれたのが、「鎌倉仏教」と呼ばれる。そこで「6つの仏教」が生まれた。それまでの仏教は庶民を対象とするより、寺の修行僧や一部の為政者のものであった。庶民にまで仏教が広まったのは、この鎌倉仏教からである。
そして現在の日本の仏教は、まさにこの「鎌倉仏教」の流れをくむのがほとんどである。特に現在の日本で一番多い「浄土真宗」も、まさに「鎌倉仏教」の一つである。
2.『6-2-6』の「場所」と宗派
(1) 奈良仏教の南都六宗
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教科書的には、奈良時代は「なんと(710)見事な平城京」の710年から、「なくよ(794)ウグイス平安京」の794年の約80年を指す。実際には、平城京と平安京の間には「長岡京」があり、それ以外にも都はあるが、ここでは一般的に言われる「奈良時代」で話を進めたい。
① 法相宗(ほつそうしゅう):道正が伝える。現存し、興福寺・薬師寺が本山。
② 俱舎宗(ぐしゃしゅう):法相宗の一派(付宗)
③ 三論宗(さんろんしゅう):元興寺、大安寺が本山。
④ 成実宗(じょうじつしゅう):三論宗の一派(付宗)
⑤ 華厳宗(けごんしゅう):良弁が開祖。東大寺が本山。
⑥ 律宗(りつしゅう):鑑真が開祖。唐招提寺が本山。
平城京とは、すなわち現在の奈良市のあたりに立てられた都で、女帝の「元明天皇(第43代)」の時代に建てられたものである。この「平城京」の時代が「奈良時代」と呼ばれている時代で、この頃、仏教が大きく花開いた。
その頃に勢力の大きかった仏教の宗派の6つを後世の人々が「南都六宗」と名付けた。「南都」とはその後に長く続く京都の平安京からみて「南」と言うことである。
南都六宗は以下の通り。
(2) 平安二宗は、京都にて「最澄」と「空海」が開祖
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都は、奈良の「平城京」から京都の「平安京」へと移った。平安京の時代は「平安時代」と言われるが、その頃に大きな勢力となったのが、2つの仏教宗派であった。
それが「最澄」(767年~862年)が開いた「天台宗」と、「空海(弘法大師)」(774年~835年)が開いた「真言宗」である。「天台宗」の本山は、後の世に大きな影響を与える「比叡山延暦寺」である。そして「真言宗」の本山の一つは、京都の東寺である。
(3) 鎌倉仏教は、現在にもよく聞く宗教が多い!
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現代の日本において「仏教」と呼ばれるのは、ほぼ大多数が「鎌倉仏教」に由来する。鎌倉仏教と呼ばれる宗派が生まれるのは、長く続いた平安時代の末期で武士が台頭し戦国の世に入る時代である。平安時代は390年もの長きに渡り続いたが、その後期には疫病の蔓延・武士の台頭に伴う社会の変革などが目立ってきた。そうした背景で生まれてきたのが「鎌倉仏教」で、西暦1100年~1200年頃である。
鎌倉仏教は大きく分類すると6つある。
法然の「浄土宗」(じょうどしゅう)
親鸞の「浄土真宗」(じょうどしんしゅう)
日蓮の「日蓮宗(法華経)」(にちれんしゅう)
一遍の「時宗」(じしゅう)
栄西の「臨済宗」(りんざいしゅう)
道元の「曹洞宗」(そうとうしゅう)
教科書等で覚えている人もいると思う。ここではあくまでその6つの分類を述べるにとどめるが、その教えは今の日本人にも大きく影響を与えている。宗教色が薄れた現在でも「信じるのは仏教」と言われる人は、ほとんどがこの鎌倉仏教のどれかに入る。特に「浄土真宗」は葬式の時に強く意識する宗派と思う。
なお、場所は京都と鎌倉を中心にしつつ、大きく散らばっている。
3.『6-2-6』の代表のお寺を見よう!
(1) 【6】奈良仏教の南都六宗と言えば、奈良の東大寺・興福寺!
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奈良仏教は上記の「南都六宗」を中心に、政治と密接に関わりながら発展していった。
華厳宗の本山と言われる東大寺の「大仏」はまさにこの頃に建てられている。聖武天皇(第45代)の時代(724年~749年)に建立された大国家プロジェクトであった。
また、そのすぐ近くにある「興福寺」は今でこそ小さいが、明治まで大勢力を誇っていたお寺である。古い仏教に思えるかも知れないが、南都六宗も今にも引き継がれる仏教である。
(2) 【2】平安仏教と言えば、京都の「比叡山 延暦寺」と和歌山の「高野山 金剛峯寺」
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平安仏教は二宗だけなので覚えやすい。「本山」といえども「宗派」によって増えるが、とにかく2つを押さえたい。
一つは、その後に多大な影響を与えた天台宗の「比叡山延暦寺」である。京都と滋賀をまたいで存在する大きなお寺である。
もう一つの真言宗で有名な高野山の金剛峯寺は真言宗の一つの宗派の「高野山真言宗」の総本山である。和歌山県の山奥にあるお寺で、山一つが修行の場であり非常に規模が大きい。
なお、京都の「東寺」も本山と言われる。「真言宗東寺派」の本山である。
(3) 【6】鎌倉仏教のお寺は、各地に広がり、そして多い!
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鎌倉仏教は多いし少し複雑に見えるので覚えにくい。この6つを大きく、更に3つに分類できる。
① 「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)」を共通とする「浄土宗系」(浄土宗・浄土真宗・時宗)
② 「南無妙法蓮華経(なむみょうほうれんげきょう)」を唱える「法華教」(日蓮宗)
③ 「禅」による修行をする「禅宗系」(臨済宗・曹洞宗)
ここで是非押さえておきたいのが、「浄土宗系」といわれる内の「浄土真宗」である。現在日本人の多くが「浄土真宗」と言われる。その後の宗派が多く生まれいろいろあるが、とりあえず「浄土真宗」の本山として、京都市の「本願寺」を挙げたい。
現在「西本願寺」と「東本願寺」に分かれるが、ここが「浄土真宗」の本山として覚えておくと印象に残る。
(4) 【6】鎌倉仏教のうち、「禅宗」のお寺は実は多い!
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鎌倉仏教の中でも「禅宗」は別で頭に入れた方がいいように思う。仏教であるが「禅」を行う為に、少々異色といえると思う。
そして、この禅宗は、栄西の「臨済宗」と道元の「曹洞宗」に分けられる。
道元の「曹洞宗」の本山は、福井県にある「永平寺」で覚えればいいと思う。
覚えるのが大変なのは、栄西の「臨済宗」である。「臨済宗」はお寺が多い!権力者である北条氏や足利氏などからの協力を得たためである。お寺を知る上では、下記の分類で頭に入れることになる。
京都五山:天龍寺(京都市右京区)、相国寺(上京区)、建仁寺(東山区)、東福寺(東山区)、万寿寺(東山区)
鎌倉五山:建長寺、円覚寺、寿福寺、浄智寺、浄妙寺(すべて鎌倉市)
少し多いので覚えるのは難しい。ただ、最高位と言われる「南禅寺」は紅葉でも有名なお寺で、南禅寺の豆腐も有名な観光地なので、是非押さえておきたい。
4.お寺に行く前に、仏教の流れの予習をお勧め!
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ここでは、観光での「お寺」で紹介してみた。歴史等については、過去記事「➡仏教と日本の歴史とお寺」を是非参照して欲しい。
観光等で訪れる「お寺」は、建物を見るだけでも日本人として親しみを感じられる。しかし、是非それに加えて「仏教」を少しだけでも理解して見ると面白い。『6-2-6』の覚え方で参考にしてもらえると嬉しい。ただし、あくまで簡単な分類なので、本気で学ん人からすれば怒られそうだが・・・。。
観光で訪れる時は、お寺の由来や宗派も知っておくとより一層楽しく観光が出来ると思う。是非、ご参考に。
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