- 2017-9-13
- 政治
- 2 comments
地政学の考え方と、それを用いて日本と台湾の関係性を見る
昨今、地政学の話がよく出てくる。それについて、日本と台湾の地理的場所を例に記述したい。
ページ目次
1.地政学の基礎理論:「ランドパワー」「シーパワー」「リムランド」
「地政学」と言っても定義が難しいようである。英語では「Geopolitics」であり、政治・軍事・経済に地理的要素を加味して考える、というのが大きな柱である。学問としては確たる定義はないようで、いろいろな議論が展開される。
その中で代表的なのが、イギリスの地理学者マッキンゼーが主張した「ランドパワー理論」と、アメリカ海軍の将校マハンが主張した「シーパワー理論」である。両者とも19世紀末から20世紀初頭の人物で、日本でいえばまさに開国・日清戦争・日露戦争の頃であり、ヨーロッパ列強はクリミア戦争、から第一次世界大戦・第二次世界大戦に入る頃である。
「ランドパワー理論」は「陸」を中心とした国家(大陸国家)が世界を支配するとし、特にヨーロッパ・ユーラシア大陸の覇者となることを主眼に置いた。一方、アメリカのマハンの「シーパワー理論」は、古くはカルタゴ・スペイン、そしてイギリスのように海洋覇権を握った国(海洋国家)が世界を制するとし、アメリカ海軍の増強を主張した。さらに、両者の理論を経たうえで、アメリカのスパイクマンの「リムランド理論」がある。大陸国家で海洋国家との間に位置する国々で、海洋国家から見れば、ハートランドへの国の入り口にあたるこの国々との連携が戦略上重要と言われる。図は、ユーラシア大陸を中心に考えた場合の、ざっくりとした勢力図である。この考えに立てば日本・イギリスはユーラシア大陸を挟む重要なシーパワー同志の国であり、実際に日露戦争の前に、大英帝国が始めて同盟を結んだ相手は日本であり、それは「ハートランド」国家のロシアをいかに防ぐかという、世界的な戦略があった。
地政学の理論はいろんな理解やケースがあるので、これが統一の見解、というのはないが、地図を見たうえで、政治・経済を理解することは、事実を理解する上で非常に納得がいく。概要をつかむなら藤井厳喜氏の「最終兵器としての地政学(ハート出版)」がおすすめである。地図が多様してあって、非常に読みやすい。
2.地政学視点での、現在のアジアと中国の膨張戦略
ページ目次 [ 開く ]
さて、この上で現在の東アジアを見てみたい。現在はコンピュータの発達や宇宙の開発こそどんどん進んでいるが、今でも地政学的な考えは非常に重要である。物流はどうしても、陸・海を使うからである。
日本は6,000以上の島を領土に持つ、純然たる海洋国家と言えよう。そして、今、アジア・世界でその覇権をあらわにしている中国の位置づけが、非常に重要である。本来、典型的な「ハートランド国家」すなわち「大陸国家」であるはずである。しかし、昨今の中国は、大陸及び海洋国家の両方を目指すべく、戦略的に着々と侵略を続けている。世界秩序を大きく変えつつある。当然、日本もその侵略の戦略のターゲットに乗っている。
先に上げたマハンは、「大陸国家であることと海洋国家であることは両立しない」と定義した。しかし、中国は①大陸、②海洋の両面から、その侵略を続けている。
図を見てほしい。決して中国は尖閣諸島だけを狙っているわけではない。そもそも、上記の中国の版図にいつの間にか、チベット・ウィグル・南モンゴルが勝手に中国の自治区になっている。これこそ侵略の証拠である。第二次世界大戦の後に侵略しているのである。
図の通り、中国はASEAN諸国で昔からの属国に近いラオス・カンボジアを足掛かかりに南シナ海への進出をすでに果たしている。次は東シナ海とばかりに尖閣諸島への侵略を進めている。
この前、藤井厳喜氏が言っていてゾッとしたのが、パキスタンである。「パキスタンと中国?」と思ったが、パキスタンはインドとの対立が続いており、中国はインドと長年対立している。敵の敵は味方と言わんばかりに、中国はパキスタンに金を投下し、関係を深めている。その上、例によって港を作ろうとしているらしい。地図を見てもらうとわかるが、パキスタンの港が中国の支配下になれば、中東からの石油を陸路で中国に運ぶことが可能になる。物流の圧倒的な変革となり、中国の経済的・軍事的優位が大きく増すことは間違いない。パキスタンは抵抗しているらしいが、世界地図を見ても、中国の戦略の大きさと実行力には、驚かされる。
3.地図から見た東アジア地域の再確認
ページ目次 [ 開く ]
では東シナ海を見てみたい。地図の通り、日本は沖縄本島と島々を合わせることで、大きな海洋上の領土を持っている。そこに計画的に中国が入ってきているのが、現状である。ランドパワーである中国が、戦略的に経済力をつけ、その帰結として領土侵略を着々と進めている。人権無視の国であり、極めて戦略的な国として中国、というより中国共産党が進めていることは非常に危険が大きい。実際、ウィグル・チベット・モンゴルで行われていることは、まったく表に出てこない。虐殺・強姦は当たり前のように行われているといわれる。そんな国が拡張を続けているのである。更に、沖縄・北海道は実質的に侵略が始まっていると言える状態である。
4.中国からみた東アジア侵略の見え方と戦略
ページ目次 [ 開く ]
一方、中国の視点で地図を見直してみる。少し見にくいが、先ほどの地図を上下反転させたのが、添付の図である。南が上である。これこそが、地政学的視点の地図の見方と言えるようである。見ての通り、中国が太平洋に出ようと思ったら、日本がいかに邪魔かわかると思う。中国からすれば、尖閣諸島及び沖縄を実質的にでも支配できれば、軍艦含め、自由に太平洋に出れるようになる。
では、日本はどう考えるべきか。当然、世界最強のアメリカとの同盟をいかに深化させるか、そして自国での武装の議論を進めることは必須であろう。ここでは、更に地図を見たうえで見えてくるものに触れたい。それが「台湾」の重要性である。
5.日本及びアジア諸国の、対中膨張戦略の可能性
ページ目次 [ 開く ]
「台湾」というと小さく感じるが、地図を見てもらえばわかる通り、相当大きい。また、中国視点での海・島を見れば、沖縄諸島の南西諸島と台湾を合わせた弧の部分が、非常に大きな障害なのである。ここで、日本がアメリカと共に台湾と連携を深め、台湾に米軍が駐留することにでもなれば、オセロの黒と白が入れ替わるがごとく、中国にとっては全く局面が変わってくる。中国と言っても全く一枚岩ではないので、そうなれば、香港や上海なども、共産党支配に反旗を翻すことが可能性として見えてくる。
台湾は親日国であり、今の蔡英文政権は、対中国に対して厳しい姿勢で臨んでいる。同じ民主国家であり、親和性も高い。トランプ大統領も台湾に対してエールを送っている。中国を考える上で、台湾の重要性が、地図を見ても見えてくると思う。ただ、蔡英文政権も苦しい状況ではあるが・・・。
特に大人になると、世界地図は見なくなるが、こういった政治の視点を持ってみると、また見えてくるものがあって興味深い。ましてや、中国という異常な独裁国家が目の前に台頭している中、日本も地理的認識を持たないと飲み込まれる。中国は何年も何十年も前から戦略的に進めてきている。日本も戦略をもって広い視点で動いてほしいと、強く願う。その大きなキーとなるのが、地政学的考え方と思う。
コメント
この記事へのトラックバックはありません。
相変わらず分かり易い!さすがですね。
百田さんの虎ノ門で桜井さんがゲストの際、中国が海路で中東まで手を伸ばしている話をされてかと。したたか、というか怖いですね。
地図みながらニュースを見ると面白いです。
中国の戦略は恐ろしいですが、その執拗さには感嘆します、、、。
日本もある意味見習いたいですね。