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「ポアンカレ予想」から数学の世界を見て思うこと

グレゴリー・ペレルマン

「ポアンカレ予想」とその後の数学の世界の動きから、数学の世界を覗いて見て思うこと

今回は、「ポアンカレ予想」というまったく理解できない話ではあるが、それを巡って起こったことについて記述したい。「ポアンカレ予想」問題そのものは難解すぎるが、それを巡った数学会を見てこんな世界もあるのか、ということでお読みいただければ、と思う。


なお、この記事の基礎となる「ポアンカレ予想」を巡る部分は、私が昔に見たNHKスペシャルの記憶が基礎であることを断っておく。

1.「ポアンカレ予想」とそれを巡る数学の世界

「ポアンカレ予想」とはその名の通り、1904年にフランスの数学者アンリ・ポアンカレが提出したものである。「予想」であり、英語表記は「Poincaré conjecture」と「conjecture」であるから、辞書を引けば「推量」、「憶測」である。そこまで断った上で、内容は下記である。

単連結な3次元閉多様体は三次元球面(Sの3乗)に同相である

ということらしい。意味がさっぱり分からない。

アンリ・ポアンカレ

アンリ・ポアンカレ

「推量」ということで、ポアンカレからの問いかけとして、提唱されたそうである。ポアンカレが「『単連結な3次元閉多様体は三次元球面(Sの3乗)に同相である』ということを証明できるか?」と言った、ということである。
あまりに意味がわからないではイメージがつかないので、そこをNHKの番組では解説していた。内容は下記である。

地球のある一点からある方向に無限に長い紐つきのロケットを発射したとする。もしもロケットが宇宙を一周して地球に帰還したとして、この紐を引っ張って回収できるのか?できた場合、宇宙は球形といえるのか?という問題に対する予想である。

更に番組で「要するに」とついた解説が、
「宇宙の真ん中に空間があるかどうか(ドーナツ状か?)」、「もしそうなら紐が結べない」
といった解説だった。そこまで来てやっと、なんとなく、ポアンカレという人がこういうことを言ったんだ、となんとか理解した。とはいっても、原文に戻るとなぜこの文章が宇宙の話になるんだ、と結局、当然私は全く意味が解っていなかった。

さておき、この後、数学の世界でこの難問が一気に広がり、誰がこれを解けるかで、大論争もしくは大競争が始まったという。これを解くのは一体誰か、ということで、数学者達はこの問題を証明するために、研究を競い合ったという。ある学者は解けたといい、それに対する論証が始まり、結局解けていないとなりといったことが何度も論争されたという。「解くのには人類は100年はかかる」、とまで言われても、論争は尽きず、研究に没頭するあまり、行方が分からなくなった人も一人や二人ではないそうである。

2.未解決の数学問題「ミレニアム懸賞問題」とは

こういった、訳の分からない、と言っては失礼だが、同じような数学上の「命題」はいくつもあるらしい。そういったものの中で、アメリカのクレイ数学研究所が「ミレニアム懸賞問題(millennium prize problems)」として、2000年に7つの命題を上げている。これを解けば懸賞金100万ドル(約1億円)がもらえる、という。ポアンカレ予想もそのうちの一つである。

見たら、どの問題も何をいっているのか全く分からない。数学の問題かどうかさえ解らない。ポアンカレ予想の兄弟みたいなものである。しかし、それを解くことに命を懸けている、と言ってはオーバーだが、人類未解決事件のように、その探求をして人生を破壊してでも研究している人達がいるという世界があることが、私にとって衝撃だった。

また、そのうちの一つの「ポアンカレ予想」が、宇宙のたとえで同義になるということは、数学を解くと、その理論の応用はそんな仮定ができてしまうものなのか、と、改めて思った。確かに今の科学を見るとこういう理論の積み重ねがあって、科学等の次にいろいろ進むのか、と、少し恐ろしさを感じたし、それを解く魅力も、なんとなくだが、理解できる気がした。

3.謎の解決者「グレゴリーペレルマン」

7つのミレニアム問題のうち、唯一解かれたのが、「ポアンカレ予想」である。しかも唐突に。非常にミステリアスに、そろりと発表された。
2002年11月11日に投稿サイトに出てきたそうである。NHKの番組を見た限りの話ではあるが、当時突然サイトに出てきた論文に、「何だこれは?」といった反応だった数学会が、「よく見たら解けている」、という、つまりポアンカレの言うことを証明できている、と、いったことらしい。

しかし誰が解いたかがわからず、数学会は騒然となった。

グレゴリー・ペレルマン

グレゴリー・ペレルマン

結果的には判明し、グレゴリーペレルマンというロシアの数学者であった。しかも、その説明を聞いた数学会は、ウィキペディア表現をそのまま借りると「まず、ポアンカレ予想を解かれたことに落胆し、それがトポロジーではなく(トポロジーの研究者にとっては古い数学と思われていた)微分幾何学を使って解かれたことに落胆し、そして、その解説がまったく理解できないことに落胆した」
ということらしい。とにかく、衝撃的だったという。

ではなぜペレルマンは、そんな手法で、しかも匿名で出したのか。また、名前が出た後は英雄の様になっているか、といえば、全く違う。懸賞金は一切もらわず、数学会のノーベル賞と言われるフィールド賞の受賞を拒否し、「自分の証明が正しければ賞は必要ない」といったという。番組ではペレルマンの経歴をやっていたが、学生時代には笑顔の絶えない人として友人たちから記憶される人だったそうである。今は、スウェーデンで研究をしているそうだが、人と会うのを避け、表には出てこないそうである。

数学会に対する不満等があったそうだが、噂レベルであり、本人の問題なので、話としてはこれ以上はない。私としては、何かすごい世界を見た気がして、ペレルマンもだが、数学会というか人間が追及する意欲というものを見て、強烈な印象を得た話であった。

4.「2=1」を証明する?

まったく話のレベルは下がるが、少し前に読んでいた本に、今から「2=1」を証明しますとあって、下記の方程式があった。「2=1」な訳はないわけで、是非その本が言っていることに付き合ってほしい。

「2=1」を証明する?

「2=1」を証明する?

数学なので、証明は方程式である。
フムフムと先を読み解く。途中④で懐かしい因数分解があり一瞬「うっ」となるが、この程度ならと、とさっと通ったら、最後の⑦までたどり着き、「2=1」になってしまった・・・。
この方程式に誤りがあるが、気づいた方はいるだろうか。私は、「なんだこれ」と思いつつ、数秒悩み、速攻で次のページへ行った。なぜかわからなかったので・・・。
数学上おかしいところは、⑤である。①で「 x = y 」とあるのため、「x – y = 0 」であり、0で割ることは、数学上禁止されているから、この方程式は、数学の前提に立っておらず誤り、ということになる。

「そういうことか」、と思う人はそこでとどめてもらえるが、そこで、「なぜゼロで割ってはいけないのか、ゼロとは何か」とか考る人は学者になるような人なのかな、と思いつつ、当然前者の私は次へ進んだ。残念ながら私にはミリオン懸賞金には程遠いようである・・・。

5.数学の世界を見て

私の例題はあまりにレベルは低いが、数学というものを受験期のものだけでなく考えてみると、非常に深い。数学とは仮定をおいた学問ではあるが、その仮定の中でいろいろな議論が展開される。
また、この記事からは脱線するが、プログラマとして仕事している私はやはり知るべきことが多いし、以外に面白い。高校数学を基礎として、それがどうやって応用されているか見ると、数学に対する視点が変わるし勉強する意欲となっている。なかなか進まないが・・・。
そして戻すが、そうした研究の結果、凡人には理解できない強烈な式が証明されたとき、それに立脚した次の物理か化学か何かが動き出し、それによりまた何かが「証明」され、人類はそれを科学にするのだろう。
しかし、あえて今の私から思うことは、すべて「数学」という人間が作った世界での証明である。もちろんその正確さに立脚して科学はすべてあるが、そっちの方が上、と思うことはない。「ポアンカレ予想」は解かれ、それにより宇宙の可能性が一つ証明されたのだろう。ただ、それが「事実」かどうかは、謎でいいのでは、と思う。とはいっても、それが応用されることで、また人類は新たなるものを手に入れるのだろうか。
どの時代も分野もやっていることではあるが、人間がそこまで「解明」に突き進む欲求というものの凄さを感じる。とはいえ、歴史好きの私が歴史をどんどんみていく行為も、それに含まれるのかな、と少々思った。

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