「言志四録」の「・・・人の長処(ちょうしょ)を視るべし、短処(たんしょ)を視ることなかれ・・・」に思うこと
1.佐藤一斎と「言志四録」と西郷隆盛
今回取り上げるのは「言志四録(げんししろく)」からの言葉である。まず「言志四録」とその著者について、簡単に説明したい。
「言志四録」は江戸末期の儒学の大家「佐藤一斎(さとういっさい)」がまとめた本で、特に幕末において西郷隆盛が熱心に愛読したことで知られる。
佐藤一斎は江戸末期の儒学の大家で、門下生は3,000人を越えている。美濃の岩村藩(現在の岐阜県の岩村城を拠点とした藩)の出身である。
文化2年(1805年)頃から塾頭をまかされ活躍する人で、幕末より少し前にその名をとどろかせた。弟子には、あの佐久間象山や横井小楠がおり、その教えをまとめた「言志四録」は吉田松陰や勝海舟にも愛読され、深く影響を与えている。
2. 「・・・人の長処(ちょうしょ)を視るべし、短処(たんしょ)を視ることなかれ・・・」
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今回取り上げたい文は以下のとおり。(第70条)
短処を視れば、則ち我れ彼れに勝り、我れに於いて益無し。
長処を視れば、則ち彼れ我れに勝り、我れに於いて益有り。
(意訳例)
人を見るときは、その人の優れたところを見るべきで、短所を見てはいけない。
短所を見れば、自分が優れているので、おごりの心が生じ、自分のためにならない。
だが、長所を見れば、相手が自分より優れていることがわかり、これに啓発され、励まされるから、自分の利益となる。
この言葉は当たり前のように思えるが、なかなか実践は難しい。とかく仕事の場面では、特に人の悪いところについて目が行きがちである。なかなか、人の良くやっているところに着目した議論にならない事が多い。
3. 上司・部下の関係としての「長所を見る意識」の重要性
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言志四録が言うのは、「短所ばかり見ていては人の成長はない」と言うことである。他の短所ばかりが目に付けば、その部分は当然自分は出来ている部分のため、そればかりを見ていても自分の優位性のみが高まりおごるだけである、という。逆に長所を見れば、自分への啓発になるという。
これは上司と部下の場合にも意識したい言葉と思う。ただし、上司の立場、あるいは先輩の立場では「短所の指摘」は指導として必要と思う。ここで大切にしたいのは「長所を見る」ことの意識である。上司であろうと先輩であろうと、全てに優れているなどということはない。必ず部下や後輩には評価すべきあるいは勉強となる「長所」がある。そしてそれを意識して見ることは、部下を育てることのみならず、自らを育てることのために重要である。
自戒を込めて・・・。
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